2009年6月17日水曜日

代償


先日、ミュージックシェアリング、五嶋みどりと若き演奏家たちのコンサートに行ってきた。
去年のコンサートも素晴らしかったが、今年は最前列で見る(聴く)事ができ、楽器の生の音そのもの、そして、五嶋みどりの演奏を、文字通り肌で感じる事ができた気がした。もはや、感想も文字に起こせない。拙い文章で表現して台無しにしてしまうのが恐ろしい。そういう音楽だった。

そんな興奮もまださめやらぬ今日、用事があって市役所に行くと、ロビーにある大型テレビに、五嶋龍が出ていた。NHKの放送で、インタビューを受けているようだったが、これは生演奏もありなんじゃあなかろうかと思い、最前列のイスに座って見入っていた。すぐ近くの席にはおじいさんがテレビとは逆向きに座っていて、一体何をしてるんだろうこの人は、とか思っていたが、少し考えれば、平日の昼間、いい歳の男が、適当な服で無精髭で、市役所のロビーでNHKなんか見てる自分のほうが、ずっと何をしているのかわからない。
後から思い出してみれば、通りすがる職員の人たちが、チラチラとこちらを訝しげに眺めていた気もする。
途中パガニーニを独奏の時にはテレビの音量が小さいので、さらに近づいて見ていたし、怪しさは最高潮に達していたに違いない。テレビの中にいる二十歳そこそこの天才青年とはエライ違いである。

しばらく市役所には行けないが、おかげで良いものが見られたので、これで良かったのだと自分に言い聞かせた。

0 件のコメント: